gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

モンゴルの草原で出会った少女

夏の日にモンゴルの草原を自転車で旅したときのこと。

朝走り出したときは舗装された道だったのが、途中でダートになり、最後には道自体がなくなって、草原を走った。しばらくは、走れる状態だったが、だんだんと草の量が減っていき、とうとう砂の上を走ることになった。こげばこぐほど埋まっていく。

あきらめて自転車を押した。急に体力を消耗し始め、持ってきた水は14時ごろにはすべて飲み干してしまった。

目の前に広がる草原は、ただ延々と続いていて、道は見えてこない。もちろん、町なんてどこにも見えない。水を飲み干してしまったことは、今度は精神力を消耗させた。

とぼとぼと砂の上で自転車を押していると、遠くに小屋が見えてきた。廃屋なのか、人が住んでいるのか、遠くからでは分からない。希望を持って、近づいていった。

小屋に近づくと、3歳くらいの女の子が、外でひなたぼっこをしていた。女の子は、突然の外国人の来訪にずいぶんびっくりしたようで、ひくひく泣き始めた。怖かったのだろう。顔がひきつっている。

申し訳ない気分で、できるかぎりの笑顔をつくってみた。効果はなかった。仕方ないので、切羽詰った表情で水を飲む格好をして見せた。女の子は泣きじゃくりながらも、あっち、あっちと指をさした。

指をさされた方向へ歩いていった。しばらくすると、たくさんの羊が水を飲んでいる場所に着いた。水が湧いていた。彼女のお父さんらしい人が、顔色一つ変えずに立っていた。そして、私に飲むように勧めてくれた。

草原は、そのとき必要なものを私のために用意してくれているかのように思えた。