建築に興味を持ち始めた頃に、エミリオ・アンバースを知った。
地面と建物が、連続かつ微分可能なラインによってつながれている、という在り方に夢を感じた。
自分とは関係の薄い建物で世の中は溢れている。自分の居場所は、どこにいても実はとても少ないのである。
エミリオ・アンバースの建物は、外と内の境界が曖昧な、その形状から、心理的に、人に居場所を提供できるのではないか、と思った。
まるでゴルフ場の中のような場所にたくさんの計画がなされていたが、殺伐とした街にこそ、この形状が必要なのではないか、とも思った。
その頃、私のテーマは、人が周囲の環境に対して感じる疎外感をいかになくすような建物をつくるか、ということであり、私にはエミリオ・アンバースはこのテーマにぴったりの空気感を醸し出しているように見えた。
今は、このような建物自体にリアリティを感じることができない。だが、その個性はいろいろなヒントを与え続けてくれる。