gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画 シャイン

わが子のピアノの才能を育て、溺愛するがゆえに、開花するためのチャンスを潰してしまう父親。主人公は、その父親を振り切って、ロンドンへ留学し、父親との共通の夢である「ラフマニノフピアノ協奏曲第3番」の演奏を成功させる。しかし、それでも、父親の赦しは得られず、主人公は精神を病んでいく。

私にとって、このすばらしい映画の最大の魅力は、彼の人生は、精神を病んだ後の方が、むしろ、あたたかい優しさに満ちているということである。精神を病む前に満ちていた悲哀が決して消え去ったわけではない。きっと、生き残るために回路を閉ざしたことが、彼の人生を深化させたのである。たくさんの人が、彼の病の向こう側に、安らぎに満ちた何かを見ている。

彼は、誰のためにピアノを奏でるのか。そのような問いを消し去ってしまうような彼の演奏は、タイトル通り、光り輝くがゆえに、対象が何も見えなくなってしまうことに似ている。