とにかく女にもてる。大勢の女にもてるということと嘘つきということは、イコールなのかもしれない、などと思ってしまうのは、きっとやっかみなんだろう。
井上は、ぼくには見えないところに目が行くのだ。それは、ある種の大切な優しさだ。それが人を支えることがある。ぼくにはできないことだ。
井上にときめいている老女の横にいる、どこか不満げな顔の夫もきっと同じ思いだろう。白旗を上げるしかない。
言ってしまえば、嘘に満ちた人生だろうが、本人が講演でネタにしているわけだから、嘘とも言えない。
「自分の人生のどこを切り取って話すかを本人が決めるのだから、本当にあった話もフィクションだ」という。
確かに。当然、自分にも思い当たる。
映画の中で、かれはガンで亡くなってしまう。彼が生きて、死んだことは真実だ。生き返ることはない。
それを突き付けられる。