gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画 全身小説家

1994年。原一男監督。井上光晴

 

とにかく女にもてる。大勢の女にもてるということと嘘つきということは、イコールなのかもしれない、などと思ってしまうのは、きっとやっかみなんだろう。

 

井上は、ぼくには見えないところに目が行くのだ。それは、ある種の大切な優しさだ。それが人を支えることがある。ぼくにはできないことだ。

 

井上にときめいている老女の横にいる、どこか不満げな顔の夫もきっと同じ思いだろう。白旗を上げるしかない。

 

言ってしまえば、嘘に満ちた人生だろうが、本人が講演でネタにしているわけだから、嘘とも言えない。

 

「自分の人生のどこを切り取って話すかを本人が決めるのだから、本当にあった話もフィクションだ」という。

 

確かに。当然、自分にも思い当たる。

 

映画の中で、かれはガンで亡くなってしまう。彼が生きて、死んだことは真実だ。生き返ることはない。

 

それを突き付けられる。