陽向にいろいろと問題を出すと、陽向は一人称、二人称で考えることはできても、三人称で考えるのは苦手だ、ということが分かった。
陽向とぼく、が主人公の数学の問題は解けるが、主人公を、AくんとBくん、に換えると途端に解けなくなってしまうのだ。
数学とは、要素の入れ替えが自由なことこそが本質なのだから、つまりは、陽向の中には現段階で数学的構造ができていないということになる。
だが、一対一で向き合うことを重視するグリッドフレーム的視点で見ると、これから抽象化を学んでいくことは必要だとしても、今の彼の持つ感覚を大事にしてほしい。
彼は、今まで他人を批評することがない。それは、ある意味では他人同士を比較することがないからではないか。そして、それはすばらしいことではないだろうか?
今の陽向の視点でこの世界を生きる、ということを一度体験してみたい。