gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

エクアドルからの出国

1988年、ペルー、エクアドル、コロンビアを旅行した。南米は政情が不安定な時期と言われていた。インフレ率がひどく、ペルーで1週間の間に価格が数倍になったりしたような記憶がある。治安が悪いとひとことで言うが、そのころの南米は、犯罪者が多い、ということのみならず、治安を維持するはずの警察自体が荒れ果てていた。

事実、旅先で会った日本人の半数は、警察犬に肩を咬まれたとか、警察官に銃口を口に突っ込まれたとか、様々な被害を受けていた。

その日、私はパスポートに問題を抱えていた。コロンビアからエクアドルへ入国するとき、ビザがないことを指摘され、エクアドルの入国スタンプを押してくれなかったのである。しかし、次の日にエクアドルの首都キトからペルーのリマまで空路で行かなければならない理由があった私は、どさくさにまぎれて、そのままキト行きのバスに乗り込んでしまった。

空港で入国スタンプがないことを指摘されたらやばいことになるかも、と緊張していた。上述の被害にあった日本人のほとんどは、まさに出入国のトラブルが原因だったからである。

飛行機が出発する時間まで、何ができるか、何をすべきか、を考えた。何をするにも、あまりにも時間が短い。方法はひとつだ、と思った。

空港には早く着いたが、飛行機が出発する時間のほんの10分前に出国審査のブースに駆け込んだ。チケットとパスポートを見せて、あせった顔でチケットの出発時間を指差してアピール。審査官は手早く出国スタンプをポン。その間、わずか数秒。一日悩み続けたというのに。

というわけで、私のパスポートにはエクアドルの入国スタンプはないが、出国スタンプはある。(写真はキトの街)