地下にある本屋から地上への階段を上る途中、見慣れない姿のビルを正面に発見する。
ガラス張りのビルの上部に石張りのデザインを施されていることにいつもは全く気づかない。おそらくこの階段がなければ、そして、地下に本屋がなければ、ずっと気付かないままだったろう。
新宿の超高層ビルはスカイラインを形成するから、自然にそのかたちを認識しているけれども、それほど高くないビルについては、見ようとして見なければ、ビルの上部のデザインに気づくことは稀である。
気づかれることのないデザインが街にはたくさん潜んでいるに違いない。デザイナーとしては、ある意味で失敗なのかもしれないが、なんでも一目瞭然の街なんて逆につまらない。
むしろ、このビルのデザインのような存在の仕方が私は好きだ。
