陽向が家にある時計を壊す。壊れた時計をぼくが修理する。陽向がまた壊す。ぼくがまた修理する。。。。
こんなことが続いている。陽向は他の機械には手を触れない。壊すのは時計だ。
きっと壊したい理由があるのだろう。
彼は、時間についての概念を身に着けていない。
時刻についても、時刻と時刻の間の時間についても無関心だ。
約束の時間を設定しても、アバウトにしか対応できない。これについては、ぼくがケニアを旅したときに出会ったケニア人を思い出す。
彼は約束の食事の時間に2時間遅れてきた。文句を言うと「来たんだからいいじゃないか」と表情も変えずに返された。「まあ、確かになにか困ったわけじゃないよな・・・」とぼくもそれ以上言うのをやめた。
「時計は好きじゃない」という陽向の主張は、「自由でいたい」という心の裏返しだろうか?