それまで騒いでいた子供たちが
何かを感じて、つい静かになってしまうような空間がある
それは、時間が生まれる音を聴いたからかもしれない
夜明けのことを「夜のほどろ」と表す歌が万葉集にある
「ほどろ」とは、解く(ほどく)、施す(ほどこす)、迸る(ほとばしる)であり、
「ゆるみ、くずれ散るさま」を意味する
動かない固い暗闇が朝陽に融けて崩れ散る動的な様子を表すのが
「夜のほどろ」だった
「時」は「解き」、あるいは「融き」だという説がある
固まって動かない永遠性が解体され、その瞬間に「時」が生まれる
そして、解かれたものはやがて、また結ばれ(=「むすび」)、
固まって動かなくなる
時間は、生まれて、消えることを繰り返す
止まっているところに時間は存在しない
人は誰でも生を受けた瞬間から、
体一つになっても常に余りある永遠を手にしている
聖なるものとは、
永遠が解体され、時間が生まれる瞬間を私たちに示すものではないか