古代の日本人はそのような時間の捉え方をしていなかったかもしれない。
夜明けのことを「夜のほどろ」と表す歌が万葉集にある。
「ほどろ」とは、解く(ほどく)、施す(ほどこす)、迸る(ほとばしる)であり、「ゆるみ、くずれ散るさま」を意味する。動かない固い暗闇が朝陽に融けて崩れ散る動的な様子を表すのが「夜のほどろ」だった。
「時」は「解き」、あるいは「融き」だという説がある。 固まって動かない永遠性が解体され、その瞬間に「時」が生まれる。
そして、解かれたものはやがて、また結ばれ(=「むすび」)、固まって動かなくなる。
時間は、生まれて、消えることを繰り返す。止まっているところに時間は存在しない。
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