静物画のことをstill lifeという。
「動かない実物」という意味で、特に深い意味はないのかもしれないが、何か気になる言葉でもある。
中学生の時に、油絵教室に通い始めた。
当然のように、パンやリンゴや布や陶器をテーブルに並べて、静物画を描かされた。
別にいやではなかったが、だからといってワクワクするものでもない。
練習なのだろうが、これである必要はまったく感じない。
モヤモヤしたものを感じたものだ。
展覧会で静物画を見ても、同じことを感じる。
何を思いながらこれを描いてるんだろう?
何も思わないならば、この絵に何の意味があるのだろう?
ただ、still lifeという英語が好きだ。
人が描く限り、たくさんの意味があることも、今では感じられる。
ぼくは、この年になって、だんだんと自分がやりたいことも定まってきて、
それにただ没頭する人生の段階に突入している。
いうなれば、still life(動かない人生)を生きている。
そして、ぼくもだんだん静物画のような、ことさらに主張しない人間になれたら、と思う。
もはやstill lifeは、人生の目的ですらあるようだ。