20年前の「スクラップの茶室」の記事を見てお問合せをいただいた方へ・・・
何かに一対一で向かい合うこととは、例えば「スクラップ」と向き合う姿勢です
一般的に好かれているかどうか、とは関連のないところから、ものに興味を向けることです
私は、そういう対象の在り方を「外部的」と呼んでいます
私はこれを目標にしているのですが、
時代の変遷がプロとしてこの仕事を続けることを難しくしているところがあるのが現状です
約20年前に会社を興した頃は、
人々に入ってくる情報量が現在と比べればまだまだ少ない頃で、
オリジナルで考えるものの持つ「斬新さ」は、ある程度「外部的」でもありえて、
多くの場合、私たちの「つくりたいものをつくる」ことの自由さは歓迎されました
私たちが本格的に店舗空間をつくる会社としてかたちを成したのは、2004年くらいからですが、その頃も「斬新さ」というイメージのみで、十分に存在価値を感じていただける会社でありえたように思えます
しかし、ネット社会が世界へ広がるにつれて、急速に空間のさまざまな新しいイメージをクライアントやカスタマーが日常的に目にする時代になりました
どんな空間アイディアも既視感をもって見られるようになり、クリエイティブであろうとして、もがき苦しんで出されたデザインも、そのインパクトを急速に失っていきつつあります
「斬新さ」という言葉そのものが消えようとしているのかもしれません
そして、クライアントが、インスタグラムやピンタレストで見つけた画像を組み合わせて、こんなお店をつくりたい、と具体的なイメージをつくれるようになったのです
これまでずっと私たちには、デザイン的にお任せしてくださる仕事がほとんどだったのですが、この1年間くらいはクライアントがデザインを先導し、私たちはそれを取りまとめていくような仕事もちらほら出てくるようになりました
つくりたいものとしてオリジナルのアイディアがあることを武器に闘ってきた私たちとしては、存在理由に関わる重大な問題です
しかし、よくよく考えてみると私たちは必ずしも「斬新さ」を追い求めてきたのではなく、「外部的」なものを取り込んで「一対一」で向き合うことのできる自由な空間をつくるために興した会社だったのでした
インスタグラムやピンタレストの画像を元につくられる空間は、まさに「一般的に好かれるかどうか」を目的としてつくられる快適な空間ばかりなので、私たちが求める空間とは逆方向を向いているといってもよいのです
今、そんな快適で眠気のするような空間が、どんどんつくられていることを残念に思っています
でも、例えば、私たちにつくらせていただいた美容室「Real Clothes」や「Kojima for beauty」などは快適な空間ではありませんが、そこのスタッフさんやカスタマーに刺激を与え続けることができている空間だと自負しています
私たちのつくる空間の本質的な価値は、あの記事の「スクラップの茶室」と今も変わらないのです