gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

リアルな空間

私はニューヨーク州バッファローで建築を学ぶことになって、廃墟のような町で、模型の材料集めにスクラップヤードに通った。

うず高く積まれた、捨てられたもの、の山には、ベンツのボディとファミリーカーのボディが何の区別もなくただの鉄の塊として積み上げられていて、「スクラップの山」「元は何だったのか」「引きずられたり、踏まれたりしたカタチやディテール」という3つの視点が交錯する不思議な世界がそこにあった。

それぞれの視点は、「経済的」、「一般的」、「創造的」。私は、この3つの視点がひとつの空間の中に集約されたときに、人を覚醒させることのできるリアルな空間が成立する、と考える。

店舗空間もオフィス空間も、大きく分けて次の三つの要素があると思う。

1.機能的要素・・・機能に関わるもの。これがなければ、営業が成り立たない不可欠要素。

2.一般的要素・・・誰にでも通じるもの。例えば、流行っている空間に共通する表層的要素。短期的に効力を発揮する。

3.創造的要素・・・感じようとすることで発見されるもの。世界に一つの空間にする深層的要素。長期的に効力を発揮する。

これら3つの要素が絡み合うことでリアルな空間が成立する。しかし、現在、よくつくられている空間は、3つめの創造的要素が欠けていることが多いのではないか。

働く空間が、人を創造的にさせることを後押しするためには、私は例えば、空間の一部にスクラップの壁のような、問いを喚起するような存在を持ち込むことが有効だと考える。

人の協働を後押しする工夫については、帰納的に工夫を集めていくと一定の効果を生み出すことができると思うが、個人の創造的な姿勢を後押しするためには、何らかの演繹的なアクションが空間創造の中に必要だ。


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