ぼくらが建築を学んでいるとき、ルイス・カーンの建築といえば、「本物」というイメージがあった。
光と影は、生と死を感じさせ、人間存在そのものが空間に置き換えられたような神々しさがあった。
およそ、ビジネスとは結びつかないイメージでぼくの中に記憶された。
一方で、そんな世界などありはしないことくらいはわかるが、彼の建築をけなすような文章は今のところ、目にしていない。
アメリカの西海岸にあるソーク研究所を見に行ったとき、太平洋に沈む真っ赤な夕陽を背景にして、左右対称な空間の奥から、ぼくの方へ向かって真っ直ぐに血が流れ込むような錯覚をおぼえた。
たぶん、時も味方をしてくれて、彼の建築はぼくの中で特別な位置に置かれている。