なんの道具も用いず、自らの体だけで風を切ること、それが「走る」ということだ。
2000年当時、誰よりも速く走った高橋尚子が有名なのは、もちろん五輪という大きな舞台で1位になったからだ。「走る」という言葉を象徴する存在として彼女の顔が浮かぶのはそのためだが、重要なのはそこではない。
彼女の走っている姿は、実に気持ちよさそうだった。風を切るということを愉しんでいるように見えた。走ることの本質をストレートに伝えてくれる走りだった。それが重要だ。
スポーツ中継では、やはり日本の選手を応援してしまうが、それは感情移入しやすいからだろう。スポーツの本質を伝えてくれるような選手がいたら、その選手の属する国なんて関係ない。