人を奮い立たせるものはなんだろう、と考えるときに、スポーツ観戦を思い浮かべる人は多いだろう。
人ががんばっている姿を見ると、自分もがんばろうという気持ちになる、というのは、真理かもしれない。
しかし、ぼくの場合は、マラソンのテレビを見ていると外を走りたくなるし、野球のテレビを見ているとバットの素振りをしたくなるように、自分の道とは必ずしも結びつかないところでやる気が生まれているようだ。
大昔に、受験勉強をしていて、マラソンを見て心を奮い立たせよう、と思ったのを憶えている。瀬古利彦が競技場に帰って来てから宿敵イカンガーを交わして優勝した有名な福岡国際マラソンを幸運にも競技場で見ることができた。
でも、受験勉強には影響しなかった。その夜、家の周囲を走っただけに終わった。
オリンピックで日本選手の金メダルを見て、こどもたちがその競技に没頭するようになるという話は納得できる。けれど、それぞれの勉強や仕事には影響しないと思う。
ある世界での他人の活躍を、自分の世界へ持ち込んでやる気を奮い立たせて、ずっとがんばれるほど、人間は単純にはできていない。たぶん。