ガーベージショップ・ムッシュは江東区・枝川のリサイクルショップだった。建物はオンボロで、いたるところで雨漏りがした。10数年も前のことだ。
グリッドフレームはここを拠点として始まった。空間材料としてのスクラップを集めにここを訪れたのだが、そのタイミングで女性オーナーに「ここを作業場にしたら?」と勧められたからだ。
なんともユニークな人たちが出入りしていた。縁台芸術家、芸大生、ロックミュージシャン、編集者、その他怪しい人たち…。
極めつけはオーナーで、霊能者だった。彼女は、私の亡くなった祖父と交信していると言った。祖父は私の13歩後ろで私を守ってくれている、と。祖父は私にとって特別な人だったから、信じることにした。
未来は開かれようとしているのか、それともそっぽ向こうとしているのか、わからなかった。
だが、強烈に未来を求める者たちが一瞬だけそこに集った。不思議な磁場としてのムッシュ。