とりかえのきく世界、きかない世界
グリッドフレームのつくる空間は、そこにいる自分がとりかえのきかない存在であることを思い出させてくれるのは何か、と問いかけます。
「ビジネスの世界では、人を手段として見ることを避けられないので、自分をとりかえのきく存在と感じてしまうことを避けられません。でも、未来を開いていくのは、紛れもなくとりかえのきかない存在としての自分です。」
「多くの人が、とりかえのきく世界ととりかえのきかない世界という、二つの世界を自由に行き来できる装置を必要としていると思います。」
「ぼくたちグリッドフレームは、そのような装置をつくることを根源的なテーマとして様々な空間をつくってきました。」
「例えば、カフェには心休まる環境が必要です。ぼくらだって、何も考えたくないときには、とりかえのきく世界の、たくさんの人間の中に紛れるような環境に身を置きたいと思う。その方が心が休まるから。そのような空間は、どこにでもあるような内装でかまわないと思います。」
「けれども、その空間のディテールには何か見慣れない、不思議で複雑な質感があるとします。それは、ぼーっと眺めれば、意識の中に入ってくることもないけれど、焦点を合わせれば、思わず引き込まれて見入ってしまうようなものです。」
「カスタマーは、ぼーっと眺めれば、風景として見えてくるため、とりかえのきく世界に留まることができ、焦点を合わせれば、そこに一対一の関係が成立し、とりかえのきかない世界が開かれる。カスタマーは、選択的にどちらかの世界に属することができるのです。」
「片方に開く空間」とは、つまり、そういう意味だったんですね。
自然の一部になりたい
「横浜市北山田のパン屋さんメリエスはオープンから10年の月日が経って、自然が静かにぼくたちのつくった空間に手を加えてくれて、ぼくらの手から空間を世界へと解き放ってくれています。」
「オーナーの中島さんが空間に活気を与え続けてくださって、朽ち滅びていくものと新しく生まれるものが共存する自然の姿が体現されているのを感じます。自然の森を見るように、自然のサイクルの一部として自分たちがつくったものが見えてくる。ぼくたちが幸せを実感するのは、こんなときです。オーナーさんの日々の努力に心から感謝します。」