私の最初の海外旅行はアフリカのケニア・タンザニアだった。そのとき、アフリカという響きは、遠くにある世界の象徴だった。
今でも、夢の中で旅をしているのは、どうやらアフリカである。国までは分からない。夢では、人も出てこない。ただ、荒涼とした大地が続くだけだ。それを少し俯瞰するように眺めながら、さてこれからどうしようか、と思う。迷うわけではない。なんでもできる。どちらへでも行ける。選択肢が出てくる前の、迷う前の、さてどうしようか、という気持ちである。
夢から覚めると、私が夢の中でいた場所が、たまらなく懐かしく感じられる。そこは、アフリカですらないのかもしれない。ただ、遠いどこか、である。
草の匂いがした。海風の匂いがした。風は強く、雲が流れる。不安はない。不安になる前の、まだなんだってできる自分がそこにいる。