なんだか、こんなふうになってしまったね。仕方ないね。
・・・些細な失敗で、エリート官僚の座を転げ落ちた男と、実家に子どもを預けたまま5年経った、既に若くはない風俗嬢。二人の旅。
二人とも、映画の中では、仕事をしない。だらだらと旅を続ける。とうとう女は自殺を試みる。
観ている自分は、新しい仕事を探して、がんばれば、きっと幸せになれる、という視点で二人を見ている。願望なのか、確信なのか、自分でもわからない。しかし、そのような視点の存在は揺るぎない。
だが、彼らが今までぐうたらだったわけではない。彼らなりにできることをやってきたのである。
そのような事実を前提としても、新しい仕事を探して、がんばれば、きっと幸せになれる、という視点を保持し続ける限りにおいて、私たちは生き続ける。
女は、雪の上で線香花火に何度も火を点す。それを止めてはいけない。