gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

鉄という素材について

グリッドフレームは主に鉄を加工する工場を墨田区に持っている。

もちろん、内装の仕上げにすべて鉄を用いるわけではないが、つくるものの多くの部分で鉄を用いている。

鉄を選んだ理由としては、鉄が両義的な存在だからだ。

その比重から、重厚感を表現することもできるし、薄い材料で軽やかさも表現できる。錆びていくという特性は、ざっくばらんなスタイルの人々を受け入れるし、よく使われている他の建築材料に比べ高級感があるため、よりフォーマルなスタイルの人々も受け入れる。

つまり、鉄の素材感を残して、つくられた空間は、誰もが入りやすい空間にできあがるのである。

グリッドフレームのコンセプト、「汚しうる美の空間」は、アメリカ・バッファローのスクラップヤードから始まっている。

スクラップヤードには、高級車のスクラップもファミリーカーのスクラップも、重さで測られる存在に変わって、そこらじゅうにゴロゴロと積み上げられている。

私は、そんなスクラップヤードが大好きだった。ここに来るまでは機能や社会的価値を持っていたものが、捨てられることによって、それらを失い、自然に帰る。つまり、捨てられたものたちは、素材に帰る。それらは、どの方向からも見られることができるものに変わるのである。そこで建築模型の材料探しをすることは、私にとって、何よりも楽しい時間だった。

次に何が入ってきてもおかしくない、という自由な空間がそこにはあった。スクラップヤードは、私が、誰もが入りやすい空間をつくろうとするときの究極のモデルとなった。

鉄という素材には、スクラップヤードにある、あの自由な空気が漂っている。