gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

写真家 宅間國博

1991年に宅間國博さんの写真集「REBIRTH」に出会った。時間が経って、壁のペンキが剥がれ落ちた跡などをクローズアップした写真集だ。

ぼくにとって、あるいは、ぼくの人生にとって、とても大切な写真集だ。

先月、生まれて初めてのファンレターをメールで送った。もう本を買ってから30年近く経ってから。

そして、今日なんとZOOMで対面してお話しさせていただいた。宅間さんは「当時にタイムスリップした気分です」と仰った。

とても柔らかな方で、たくさんの力をいただいた。

心から感謝、です。

 

宅間 國博さま

はじめまして

ぼくは東京で空間をつくる会社グリッドフレームで代表をやっております田中稔郎と申します

人生でファンレターなど書いた記憶がありませんが、
このメールはそれにあたるのかもしれません

ぼくが宅間さんの写真に出会ったのは、1991年に遡ります

その頃、ぼくはゼネコンの土木部の社員だったのですが、建築を学びたい、という希望を会社にぶつけると
アメリカの大学院で勉強させていただけることになって、
全く建築の知識のないぼくが出国前に日本で手に入る本を探していたときのことです

ブルータスに「REBIRTH」という写真集の小さな紹介記事が出ており、
錆びたドアの金具がアップで撮られていたのを見て、
すぐに本屋へ買いにいったのを憶えています

ぼくにとっては、それは建築の本だったんです

結局、日本からは3冊写真集を送ったのですが、
アメリカで建築を学びながら開いたのは「REBIRTH」だけでした

ぼくが建築を学んだ場所は
ニューヨーク州バッファローという、鉄工場で栄えた後に廃れてしまった寒い町で
町中がスクラップヤードのような印象がありました

ほとんどの学生たちは、そんなバッファローを嫌っていましたが、
ぼくにとっては、最高の学びの場でした

実際に、たくさんの鉄のスクラップヤードがあって、
ぼくは建築模型の材料を探すためにスクラップヤードへ行って
スクラップの山を漁るのが大好きでした

そう「REBIRTH」のあのイメージを探しながら、
ぼくの好奇心は探究心になり、
かたちを持つものに変化していきました

グリッドフレームの「ORIGINAL CONCEPT」というページに、
そのときに書いた論文の一部を載せています
(冒頭に「REBIRTH」が出てきます)

https://gridframe.co.jp/original-concept/

ぼくはずっと「REBIRTH」に出てくるような
時間が手を加えてくれたものたちを素材として
空間をつくっていくことを目指しています

でも、そのような素材を集める方法を確立することができずに
20年以上が過ぎました

しかし、ここに来てようやく足掛かりとなる収集システムを構築して
これから本当にやりたかったことを進めていける気がしているところです

思えば、今こうして希望を抱いて生きていけるのも
宅間さんの「REBIRTH」がぼくの背中を押してくれたおかげだと思っています

深く感謝しております

そんな人間がいることを、知っていただきたくてメールいたしました


少し秋めいてきたこの頃です


お体、ご自愛ください

 

2020年9月13日 田中稔

 

 

田中様へ

うれしいメールありがとうございます!!

幻の写真集「REBIRTH」を知ってる人がいてびっくりしましたよ。

あの写真集は自費出版だったのですが
250冊しか売れなくて、数百万円の赤字を出しました(笑)

田中さんは購入してくださった250人の中の1人です。


グリッドフレームの「ORIGINAL CONCEPT」というページに、
紹介してくださってありがとうございます。


実はですね、2017年に「REBIRTH」を「ペンキのキセキ」というタイトルで
新しい写真も加えて新写真集として出版したのです。

女性に見て欲しいと思ったので、カワイイタイトルにしたのですが
やっぱり売れませんでした(笑)

まぁ、自分へのプレゼントみたいなものです。


この「ペンキのキセキ」を、今回のメールのお礼に
田中さんに1冊送りますので楽しみにしてください。
以前はできなかった色をデジタル加工で再現できたので、色は美しいですよ。

 

田中さんのメールのおかげで
自分のコアな世界観に「いいね」をしてくれる人って
世の中に必ずいるんだなぁ〜ということに感動しています。

本当にうれしいメールありがとうございます。

いつか、お会いできるのを楽しみにしています。


2020年9月14日 宅間國博