gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

GF2 スクラップヤードから始まった

1990年代にニューヨーク州立大学バッファロー校の大学院で建築を学んでいるとき、建築模型をつくる材料を集めるためによくスクラップヤードへ通い、うず高く積み上げられた鉄スクラップの山から気に入ったものを探すのが日常であった。何度も訪れるうちに、スクラップヤードに、空間として他とは明らかに異なるものを感受していることに気づいたため、それが何かを解明する目的で修士論文「汚しうる美の建築」(1996年)を書き、帰国後、この論文を元に1998年に当社グリッドフレームを設立した。

 

この論文の中で、スクラップは「棄てられたもの」であるということが重要であると述べている。スクラップヤードではスクラップは巷にあったときの価値を剥ぎ取られており、①重さで価値が測られる均質な存在に変換されている。依然として、②過去は高級車の一部であった、など巷での価値をたどることはできるが、ここで機械に引きずられたり、踏まれたり、雨に晒された結果、③変形し、錆びついたりして、世界に唯一無二の存在に変化している。

 

すなわち、スクラップの山を眼前にしたとき、①②③の3つの視点が同時に成立する。模型材料として探す自分から見れば、このうち③の視点が卓越する。①②の価値が誰にも共有されるのに対し、③は見る者との間で1対1の関係で向き合うことで初めて価値が感受される。他者の視点は関与しない。言い換えれば、①②は「とりかえのきくもの」、③は「とりかえのきかないもの」として感受される。