gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画 helpless

映画は、北九州の空撮から始まる。緑に覆われた大地は、決して牧歌的ではない。その土地特有の鬱屈したようなエネルギーが渦巻いている。ここで、今この映画を観るべきか、観ないべきか、少し迷う。helplessな空気がじんわりと体の中に浸透するような体験をわざわざ今すべきだろうか。

青山真治の映画は、そう自問しなければならないくらい、力があることを認めなければならない。福岡で少年時代を過ごした自分には、その背景が体に沁み込んでいる。息苦しい日に、わざわざこの息苦しい映画を選んだ自分を呪いつつ、映画に引き込まれていく。

夏の終わりの狂った一日。乾いたピストルの音。連続殺人。蝉の声。父親の自殺。フライパンという凶器。夢のない若者たち。そこに未来があるとすれば、守るべき存在がある、ということだけ。

すべてを相対化してしまった後に、最後に残るかけがえのない存在とは何か。主人公がかろうじて生きる目的を見い出したのは、ある人を「守る」こと。理由などない。それが守るべき存在だからだ。

それが唯一の、このhelplessな人生を救う道だ。