gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画 Sad Vacation サッド・ヴァケイション

2007年。青山真治監督。

 

世間から逃げ込んでくる者たちの吹き溜まり「間宮運送」。

 

借金取りに追われている者、中国人孤児、家出人、犯罪者、あらゆる種類のはじかれ者がここに流れてくる。

 

そんな人たちに、住処と仕事を与え、外部の攻撃から身を守る背後には、理解を超えるほどの強烈な母性。それはときに、グロテスクですらある。

 

住人がヤクザに連れ去られようと、レイプされようと、そして、我が子が我が子によって殺されようと、その毅然とした表情と未来に対する楽観は少しも変わらない。

 

全てを引き受ける覚悟がそこにある。

 

全てを押し流してしまうような苦しみを伴う混沌を目の当たりにしたとしても、彼女は次のように言い放つ。

 

「死んだ者も生きている者もどうでもいい。生まれてくる者のことだけ考えればいい。」

 

地下深い、ゆったりとした大きな流れ。

 

そのうえに我々は産み落とされ、太古から未来へと連綿と続く時を刻んでいるのだ、という安堵感。

 

この悲惨な映画の後に残るものが安堵感だということに、ぼくは感じたことのない、それでいて懐かしい、ほのかな熱を胸に感じる。