gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

リチャード・アベドン

リチャード・アベドンが撮るのは人物である。モデルや俳優を撮ったものも多い。

彼がどんな人なのか、私が知っているのはそれくらいである。

だから、15年前どうして彼の写真集を買ったのか、理由は覚えていない。

ただ、自分の部屋で、彼の撮った一枚の写真のページを数ヶ月開いたままにして過ごしたことを覚えている。

それは、ベトナム戦争でナパーム爆弾を被爆した女性を正面から撮った一枚である。顔の半分がただれている。しかし、残された顔の半分は澄んだ目でまっすぐにカメラを見つめている。

私は初め、この写真を直視できなかった。

できないこと。それは現状での私の限界を表している。そして、それをできるようになることが自分を広げていくことだ。それが開いたままにしていた理由である。

リチャード・アベドンは、この写真を撮ったとき、彼女と正面から向き合っていた。

そのとき、彼の心は何を感じていたか?そして、彼女の心は何を感じていたか?