森敦の「意味の変容」は、私が人生の中で最も読み返した回数の多い本である。おそらく50回は読んでいる。
一つの理由としては、字が大きく、ページ数が少ないということがある。そうでなければ、こんなにも多く読み返すことはできなかったであろう。
初めて読んだのは27歳のときだったろうか。そのときに受けた衝撃は今も色褪せない。
「文体と内容の一致」・・・そのときの感想の中で私はこの本について、こう表現している。
空間について学び始めた頃であったから、その本に書かれた文字をなぞることによって立ち現れる空間がこんなにもシンプルにしてリッチであり得る、ということに興奮を覚えたに違いない。
読み返すたびに、新たな問いを投げかけてくる。
そう、私はこの本のような空間をつくりたいのだ。
(つづく)