gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

陽向の実存

陽向は言葉を話すのが苦手だ。話したい気持ちは強いのだが、内容を正確に伝えられない。

 

母親が彼が少し前にやったことを報告させる。正しい日本語に直して、時間をかけて繰り返させる。

 

ようやくそれができたとき、母親が褒めると、かれはなぜか憤慨し、不機嫌になった。

 

ぼくはその理由が分からなかったが、母親はすぐに気づいた。

 

彼にとって、発語したその内容にリアリティがなかったのだ、と。

 

彼の生きている実感。実存。

 

彼はそれをつかみたいという気持ちが強いのだ。

 

話す技術を憶える前に。

 

ぼくの中学時代も、そうだったことを思い出した。