「懐かしい悲しみ」とは9歳の息子陽向がワードで打った最初の日記のタイトルである。
そろそろ懐かしい思い出が浮かんでくる年頃だろうか?
そして、その悲しみを多様な視点で受け止めることができるようになった、ということだろうか?
陽向のストレートな回路での言葉選びに、ハッとさせられるのは、きっと異国にいる外国人の言葉にも当てはまるだろう。
ぼくがアメリカにいる頃、建築課題のプレゼンテーションには多くの人が集まってくれた。こなれていない英語の言葉選びは、きっと今の陽向のようで、だからこそ、新鮮な響きを持って受け止められたのではないか?
陽向が発したこのフレーズによって、ぼくの頭には、ぼく自身のたくさんの「懐かしい悲しみ」が去来している。
そう、ぼくは空間によって、同じことができると思っている。
人の心に、問いを投げかけるのだ。