gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

映画 ローサは密告された

2016年。フィリピン。ブリランテ・メンドーサ監督。

 

マニラのスラム街に暮らすローサは、夫と小さなコンビニエンスストアを経営している。4人の子供を養う為、店では「アイス」も売っている。「ローサ、アイスを売って。食うためにいるんだ」「だったらうちで食べていきな」-それはスラム街の住人たちの間で交わされる覚醒剤の隠語である。

ある日、ローサ夫婦は密告され、逮捕される。暴力的な取り調べを受け、理不尽な額の保釈金を要求される。腐敗した警察は押収した薬物を横流しし、没収した現金で宴会を開く。両親の釈放の為、子供たちは金策に走る。親族に無心し、家電を売り、体を売る。それでもまだ足りない。ローサは家族を署に残し、不足を工面しに行く。(wikipedia)

 

キナタイ-マニラ・アンダーグラウンドを数年前に観たときの吐き気を憶えている。ここにも、そんな吐き気が漂っていた。ぼくが何の恐れも感じずに旅していたさまざまな町にその空気は似ていた。吐き気をもよおすということは、今は同じ気持ちでは旅できないということだろうか。

 

いや、きっとそこへ行ってしまえば、旅しているころと同じような気持ちで溶け込めるだろう。吐き気は、日本にいるという、いわば「病」から来る。

 

この吐き気が消えて、旅していた頃の自分の空気感覚を取り戻せるかどうか。それが、ぼくが自分がもう戻れないところまで病に侵されてしまったかどうかのリトマス試験紙になる。