「自由」とは本当はどんな状態をいうのか?
ぼくは、20代の頃に27か国を一人で旅する中で、「自由」とは異国でstrangerになって次の行動を考える旅人の状態をいうのだ、という結論に至った。
次にどんな行動に出てもよい、という自由。
母国にいては、共同体のしがらみが全くない状態なんて、なかなかありえない。
そんな旅人のように生きたい、という願望は多くの人に共有されているだろう。
ぼくがいつの間にか旅をやめてしまったのは、母国にいても孤立することによってstrangerでいられる、と知ったからだ。
ぼくはstrangerになるために、自ら穴の中に籠って、20年近くも空間デザインの仕事をやってきたと言ってもいい。
ぼくは、その間、ずっと「自由」だったと思う。
GRIDFRAME HPの背景である黒は、ある意味で、ぼくのいる環境を示している。
でも、ぼくのライフワークは、ぼくたちが「創造性の連鎖」という方法で空間をつくらせていただくことを通して、「自由」に生きる人を増やしていくことなのだ。
穴の中にいては、なかなかぼくたちを見つけてもらえない。
ぼくたちに関わってくださった少数の方々にしか、同心円状に広がっていく「創造性の連鎖」の波が運んでくる「自由」を感じていただくことができない。
ぼくは穴から出ることにした。
そして、誰からも見える所へ、旗を掲げようと思う。
また旅を始めるかどうかは分からないが、同志を探して一緒にできることをできるだけ多く始めたい。そして、とにかく自分で考えてつくることの喜びを、できるだけ多くの人に連鎖させたい。
マテリアルスはそんな決意と共に、再稼働させる。HPの背景は、黒ではない。抜けるような青空だ。
すべては旅から始まったのだから、旅人となら、きっとつながれるだろう。