見る力が卓越しすぎて、聞くことに集中できない。
陽向はそう言われている。
ぼくはどうだったろうか?
ぼくも聞くことが苦手だった。
断片しか聞こえて来なくても、コンテクストを自分で補って意味をつなげていたのだと思う。
今も日常生活においては、ある程度はそのようにして過ごしている。
だが、先を読めない映画や哲学的な話については、一語も聞き逃すことができない。
ぼくは、話を聞き逃さない集中力をここで身に着けてきた。
一方で、音楽の演奏における聞く力というものがある。
ギターで曲をつくって人前で歌ったりすることがあったが、人とセッションをした経験がない。
セッションは聞く力がなければ成立しない。
陽向は、後者で聞く力を身に着けるのがいいかもしれない、と思っている。