例えば、京都の古いモノは、すべからく価値を認められて保存されていく。
だが、何のいわれもない、歴史的・社会的価値を持たないと見なされる古いモノは、忌み嫌われて、棄てられる。
小学2年になる春に、福岡県太宰府から佐賀県鳥栖市へ引っ越したとき、あいさつに伺った大家さんの家が茅葺屋根の古い家だった。ぼくは、小声で母に「古いね」と囁いたら、母に「シーッ」と咎められたのを記憶している。
ぼくは、ネガティブな意味で言っていなかったけれど、「古い」という言葉はネガティブと取られるのが常識だった。
何百年も前に建てられた建物にふつうに住んでいるヨーロッパだったら、そんなことはないのかもしれない。
日本ほど「古い」にネガティブな意味が入り込んでしまう国は少ないのではないだろうか。