以前、自分でお店をつくりたい人を支援するバーナック(「土地特有の」という意味のvernacularから来ている)というプロジェクトを進めようとしたことがある。
だが、依頼主が自分の手でつくる部分をつくり、ぼくらがつくる部分と合わせて魅力的なお店をつくっていこうとしたものだった。
こうすることで、全体を安く抑えることもできるし、依頼主自身が施工に入ることで、思い入れの強い店ができあがるという一石二鳥を望めると思っていた。
しかし、実際にやってみると依頼主の素人施工が遅れて計画通りに進まない。ぼくらは工事で生活をしているわけだから、このことは致命的だった。
すぐにバーナックはお箱入りとなった。
だが、コロナの時代になった現在、この一石二鳥の発想にもう一度トライしたい、という気持ちが芽生えている。もちろん、全くカタチを変えなくてはならない。
ぼくらグリッドフレームは、店全体の企画から設計・施工までできるが、全体を受注することを基本としてきた。
それは、最も小さくても300万円以上でなければ仕事として成り立たなかったが、それは、設計・施工に手間がかかるからだ。
今、コロナで困っているお店が全国にたくさんあるだろう。困っている人々は、300万円以上の依頼をできる状況ではないはずだ。そんな人々の力になることができないならば、何のためにぼくらは生きてきたのだろう?
ならば、できることは自分でやりたいと思っている方に、お店をどんなふうに変えるとよいと思う、という概要的なぼくの意見を伝えたい。一日、真剣に向かい合って考える。そして、考えた内容を提案する。原則として、お店の方が自分でできる範囲内のことを提案する。図面などは描かない。基本的に、手描きで伝える。例えば、これで5万円なら、ご負担が可能だろうか?
その内容に沿って、自分でお店をつくられてもよいし、地元の工事屋さんにつくっていただくのもよいと思う。
これがお店の存続の力になるのなら、どんなにやりがいがあるだろうか。そんなかたちでバーナックを復活することができないだろうか、と考えている。