gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

大きな組織ととりかえのきかない世界 1

これまでの20年間のうち数年前までは、ぼくたちは主に、オーナーがそこに人生を賭けるような個人店をつくらせていただくことが多かった。

「とりかえのきかない世界」をコンセプトにつくるアーティスト集団としては、ひとつの店舗をオーナーの分身のように捉えて、オーナーがとりかえのきかない存在であるように、お店もとりかえのきかない存在としてつくっていく。ぼくらは、一分の矛盾もなく、仕事にまい進することができた。


実績が増えるにつれて、大きな企業からのお仕事もいただくようになった。同じ空間を繰り返すようなチェーン店は、とりかえのきく世界の象徴的存在だから、そのようなお仕事はさすがに来ないけれど、旗艦店やショールーム、宿泊施設など、とりかえのきかない世界の要素を必要とする施設をつくる依頼を受けることが多くなった。

大企業が取り扱う商品やサービスは、無論とりかえのきく商材という側面を多分に持っている。ビジネスライクなとりかえのきく世界観のみで、一般的な快適・簡単・便利を目標に空間をつくることは、ぼくらにはできない。とりかえのきく世界ととりかえのきかない世界は、互いに論理的に閉じているため、ビジネスとアートが同時に価値を語り合うことが不可能であるように、ぼくらがとりかえのきかない世界観のみからアプローチをしても、歯車が噛み合わず、お互いに空回りするだけだ。


いくつかの大企業と接している中で、ぼくらは、自分たちの視野を広げることなく、大企業のプロジェクトに対応することはできないことを実感した。

ぼくらの向かう目標が、「とりかえのきかない世界観から空間をつくる」というものから、「とりかえのきく世界ととりかえのきかない世界とを自由に行き来できる空間をつくる」というものにシフトしたのには、そのような理由がある。

(つづく)


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