「技術は教えられるものではなくて、盗むものだ」
職人の世界では、よく言われる言葉だ。
直接的に誰かに対して教える、という行為は、ぼくには向いていない。
大学時代のアルバイトでやっていた家庭教師もそうだった。その頃の教え子には申し訳ないけれど、振り返るとそう思う。
元を辿れば、ぼく自身まず、教えられることに向いていないのだ。
直接自分に向けて教えられる内容を素直に受け入れられないところがある。
本に書かれていたり、講演で大勢に向けて話されたりすることは、自分が主体になってそこにさまざまなフィルターをかけることができる。
そうして、安心して自分の中へ入れる。
自分の適性に合わせて、自分の中へ受け入れていく。
それは、つまるところ、冒頭の言葉に近い。
だから、人に対しても、直接的には教えることができないのだ。