人は、多様なもの、自分が把握しきれないものと関わることによって、進化してきた。
未来を開くのもまた、そのようなものとの出会いだ。
森の中へ深く分け入れば、出会いは可能だけれど、現代の生活ではその機会は限られている。
都市の中でも、出会いは可能だろうか。
空間づくりに携わる人間として、ぼくはその可能性を追求していきたい。
例えば、風化。
新建材のケミカルなものを除けば、全てのものは風化していく。
風化による表面やかたちの変化は、ぼくたちの想像力をはるかに超えていく。
時間の作用は自然がつくるものであって、それを人が模倣しようとすれば、本来の豊かさは失われ、単なる予定調和の一つに陥ってしまうのだ。
思いを実現するために、始めようとしていることがある。
外に在って風雨に晒され、風化したものから、心にかかるものを見つけ、それを新しい内装空間に持ち込む、というものだ。
壊れ行くものを、新たにつくるものと共存させることで、重層的な時間を感じることもできる。
まずは、熊本地震によって、全壊した父方の実家から、使用できるものを探すことから始めようと試みたが、瞬時の差で更地になるのが先だった。
風化したものをプロジェクトに合わせて得るのは簡単ではないが、この企てに興味を抱いてくれる人は少なくない。
有志が集まり始めた。