gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

2013.7

開くということ

開いている、とはどういうことか。それは、誰かと何かが一対一の関係を結ぶことができる状態にあることだ。その何かが、ひとつの纏まりを解かれて、自由な状態にあることだ。そんな何かと向き合うその誰かが、その人自身でいられることだ。 ← 創造性の連鎖で…

今日

今日も眠る時間を削って、机に向かっている。不確定な明日へ向かって、演繹的にぼくのできる範囲の小さな世界のかたちをつくりだそうとして、もがく。ぼくの幸福があるとすれば、こんな瞬間の中にいることの中にあるのだろう。今日、まさにこの瞬間がぼくの…

「汚しうる美」への誤解

ぼくが「汚しうる美」という言葉を使い始めてから、20年目に入った。創設時から、グリッドフレームの制作コンセプトとして「汚しうる美を空間の中に実現すること」を提唱してきた。だが、「汚しうる美」という言葉は、現在も人々に誤解されている。そもそ…

おもちゃ

子供に与える理想的なおもちゃとは、どんなものだろう?そんなことを考えていたら、夜、窓を開けた途端にアブラゼミが飛び込んできた。3歳の陽向は大はしゃぎで逃げ回る。その夜は興奮状態でしばらく眠れなかった。おもちゃと呼ぶのはセミに失礼だが、結局…

霧の観覧車

深い霧の中で観覧車を見上げる。地上10mよりも上は、白い世界に溶けてなくなっている。そんな写真を見ながら、ぼくの心ははるか遠くへ連れて行かれる。部分を見ながら、心には全体が描かれる。なんて心地よいんだろう。 ← 創造性の連鎖でつくる店舗デザイ…

映画 冷たい熱帯魚

2010年。園子温監督。怖そうな映画であることは予告編や評判でよく知っていたから、恐る恐る観た。この映画の主人公の最後のセリフは「生きることは痛いことなんだ」である。が、モンスター役のでんでんは、思ったほどハチャメチャではなく、これほど暴…

たてのつながり

陽向が保育園へ入っていくと、1年上の女の子たちが数人、陽向のほっぺたを触りに来る。そして、部屋へ引っぱっていってくれる。そして、陽向を迎えに行くと、2年上の男の子が帰りの準備を手伝ってくれて、「車に気をつけてね」と言って手を振ってくれる。…

未来の空間

未来の空間を予言できる能力がぼくにあるとは今のところ思わないが、それでもなんとなくぼんやりと見えてきたものもある。未来の空間の条件の一つとして、各個人の「在り方」に焦点が当てられるだろう。それは、現在までにつくられてきた空間の傾向を分析し…

西麻布

ぼくらのオフィスの最寄り駅は表参道だが、住所は青山ではなく、西麻布である。ぼくにとって西麻布は、バブルの頃から「The Wall」(ナイジェル・コーツ設計)の街で、ぼくの生活とは縁遠い、夜遊びの街という印象がある。隣の六本木と比べると、高級住宅地…

構成力

柄谷行人の「日本近代文学の起源」は、何かをつくる人間に「つくる」ということがどういうことなのか、を考えさせてくれる優れた本だと思う。もちろん、柄谷行人の本すべてが、そういう面をもっているけれども。ぼくは、1992年にアメリカで建築を学び始め…

深さ

いわゆる近代以前の文学を読むとき、われわれはそこに「深さ」が欠けているように感じる。しかし、たとえば、江戸時代の人々が深さを感じていなかったわけではないだろう。(中略)にもかかわらず、彼らの文学に「深さ」がないとは、どういうことなのか?われわれ…

出会い

ぼくは目の前の相手をずっと遠くにいるように感じることがある。そんなとき、ぼくという人間は決してその相手にたどり着けないし、逆もそうだ。つまり、ぼくはその目の前の相手に本当には出会っていないのだ。本当の出会いは、一生にどれくらいあるだろう? …

映画 プール

2009年。大森美香監督。タイ・チェンマイが舞台。背景に音楽がほとんど流れない、静かな映画だ。その中心にゲストハウスの小さなプールがある。登場人物たちの心の水面を表すように、おだやかにきらきらと輝いている。どうやら、母親は娘と義母を日本に…

夕立

規則正しい、ということは実は嫌いではないらしい。夏休みの暑い日の夕方、夕立が雷とともにやってきて、湿度の高い空気の塊を一掃するさまを、家の窓から眺める幸せは、夕立が毎日決まった時間にやってくる規則正しさと無縁ではなかった。ぼくは、その時間…

ぼくの小さい頃の思い出には、説明しがたいような怖さが伴っている。それは夢に出てくるような漠然とした空気感であり、色がない。セピア色と言えばそうかもしれないが、とにかくあいまいだ。高瀬泰司さんは「はったい粉とコスモス」の中で、子供の頃はすぐ…

風景

「心の中の風景」ということがある。まさに、風景とは見る人の心とつながっている。ぼんやりと風景を眺める、という時間をぼくはなによりも好む。だが、そんな自分に対して、次のような言葉が突き刺さる。「周囲の外的なものに無関心であるような「内的人間」i…

カラチ

二十歳の頃、初めて海外へ連れて行ってくれた飛行機はパキスタン航空のケニア・ナイロビ行きで、途中トランジットで、パキスタンのカラチに一泊するものだった。だから、初めて海外で一日を過ごしたのは、カラチである。飛行機会社がとったホテルに連れてい…

閉じた日曜日

家族3人で過ごす日曜日、というのが定着している。今日は九十九里の海へ行ってきた。陽向は初めて海に入る。ずいぶんはしゃいだ後、ショッピングセンターへ。妻が買い物をしている間、陽向とぼくはキッズコーナーに置いてあるおもちゃで遊ぶ。他に誰もいな…

波の音

明日は九十九里浜へ行こう。かつて、毎週末海辺を走った頃の景色が浮かぶ。キラキラと輝く砂浜を、海鳥の群れも走る。近所のおばあさんが、訪ねてくる孫のために仕掛けた網を引き上げる。きっとその格好は100年前と変わらない。妻が有名なマラソンランナ…

映画 百万円と苦虫女

2008年。蒼井優主演。ふとしたことで前科者となってしまった21歳の鈴子(蒼井優)には友達がいない。そして、中学受験を控える弟にも友達がいない。自分の身に起こったことは自分で解決していくしかない。二人はその共通点により強く結ばれている。蒼…

日本の夏

シャツの下で汗が一筋流れるのを感じながら、日陰を探して歩く夏。ぐったりと疲れて、家にたどり着くけれど、夜になって少し涼しくなった頃に10キロジョギング。このジョギングが昨年までとの違いだ。体力を使い果たしたと思っていても、案外10キロはふ…

光琳

あるプロジェクトで、尾形光琳について調べることになった。この江戸中期の日本画を代表する画家は、呉服商の次男として生まれ、遊びで財産を使い果たし、経済的に追い詰められて画業を始めたという。「ふにゃっとした放埓で無責任な性格ながら、貴族的・高…

リテラル

リテラルliteral(字義通りの)という言葉は、メタフォリカルmetaphorical(隠喩的な)の反対語で、つまり、「そのまんまやんけ〜」といわれるような表現に対して評される言葉だ。すべての分野において、と言ってもいいと思うが、とりあえず建築の設計では、メ…

探偵

林海象監督の「濱マイク」シリーズがツタヤで見つからなかったので、同じ監督の「探偵事務所5」というシリーズものを借りてきた。小学生の頃に推理小説が大好きだったこともあって、探偵といえばどこか懐かしい気持ちにさせられる。 そうそう、小1の頃だと…

めがね

前夜が遅くて、まだ眼が疲れている朝、めがねをかけて出かけようとすると、妻は残念な顔をする。我が家では、めがねはそんな位置を占めている。めがねとしても歯がゆいに違いない。めがねのデザイン性はここ20年くらいで飛躍的に向上した、と思う。けれど…

ひらめき

「ひらめき」がぼくらの仕事の原点だ。ネタ帳はない。旬なひらめきでなければ使えないから。ぼくは大男になったり、蟻になったりしながら、空間を疑似体験する。原始時代へ飛んだり、江戸時代へ飛んだりしながら・・・。アフリカへ飛んだり、宇宙へ飛んだりしな…

動いてかく汗と動かないでかく汗には、その爽快感において180度の違いがある。動くことだ。汗が飛び散るくらいに。動けるんだから。 ← 創造性の連鎖でつくる店舗デザイン:グリッドフレーム ← 五感に働きかける店舗内装デザイン:マテリアルス

太陽へ向かう

3歳になる息子の陽向(ひなた)という名前は、太陽へ向かって育つ植物のように生きてほしいという想いでつけた名前だ。考えてみれば、それぞれの名前には親自身の「そうありたい」という願望が表れていて、息子の名前を呼ぶたびに、ぼくは陽向にそうあって…

遠いところで

熊本県八代市にエステサロンとカフェをつくることが決まった。今回は、地元のクライアントだ。東京の会社のチェーン店以外では、関東から離れて仕事をするのは16年目にして初めてだ。そして、建築の基本構想からやらせていただく初めてのプロジェクトでも…

さらけ出すこと

Amanda PalmerというパンクミュージシャンのTEDでのプレゼンテーションを観た。http://youtu.be/xMj_P_6H69gぼくは全くそういうことに疎いが、クラウドファンディングで25000人のファンから1億円以上を集めて、音楽をつくり、ネットで無料配信しているそうだ…