柄谷行人『トランスクリティーク』の中で、コペルニクス的転回について、
重要なのは、地動説か天動説かではなく、コペルニクスが、地球や太陽を、経験的に観察される物とは別に、或る関係構造の項としてとらえたことである。
と書いてある。
現在は、地動説が証明されているが、生活レベルにいる私たちにとっては、まぎれもなく太陽は東から昇り、西へ沈むものにすぎない。
生活の中で、その認識によって支障が生じることはほとんどない。
私たちが地球上で猛スピードで西へ移動しているとき、絶対的にはそれとは比べものにならないくらいのスピードで東へ移動しているのかもしれないのである。
そして、だからどうだ、ということなどなにもない。少なくとも、私の日常生活においては。
だが、生活の中で経験的に観察される事象とは別に、或る関係構造の項としてとらえることの可能性は、自明と見られていた事象を転回させる可能性につながる。
どんなことだって可能性はゼロではない。