gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

体重計

目盛りは33キロを指していた。

小学校4年生の私は柔道一直線の真っ最中だった。

ある日、柔道のおじいちゃん先生がやせ型の私を見て、両親に対して「ちぃーとでよかけん、肉を食わせてもらえんでしょうか」とお願いされたそうで、苦笑いした両親はせっせと私に肉や牛乳を増量して与えるようになり、私は毎日体重計に載ることになったのだ。

食べても食べても、体重計は33キロを示していたことをよく憶えている。

****************

目盛りは68キロを指していた。

私は高校2年生で、柔道の県大会の個人戦で60キロ級に出場した夜だった。あまりに大幅に減量したため、体は思うように動かず、途中で敗退した。

減量のスタートは68キロだった。試合の2週間前から、食事を1日1食にした。しかも、炭水化物は取らないようにした。

試合前日、体重は62キロまで落ちた。だが、あと2キロがなかなか落ちない。サウナへ行って、2時間汗を絞り出した。ミイラになったような気持ちだった。

その夜の夢は、カレーライスの夢だった。大さじスプーンですくったカレーライスが、湯気をたててクローズアップされていた。

朝の計量が終わったら、絶対にカレーライスを食べてやる、と心に誓った。だが、こんなにも減量が苦しいものなら、次の大会に備えて体重は64キロ以上は増やさないようにしよう、とも心に誓った。

それでも、今日くらいは好きなだけ食べよう。

無事、計量をパスした瞬間から、洪水がなだれ込むように体に食べ物が運ばれた。試合の時間以外は、とにかく何かを食べていた。

・・・その夜、目盛りは68キロを指していた。

グリッドフレームのHPへ ← グリッドフレームのHPはこちらです