実家の熊本へ帰っている。
実家とはいえ、父の転勤によって、私が熊本で過ごしたのは15歳の夏から19歳の春までの4年足らずだ。他の場所と比べて思い出が多いわけではない。
ただ小さい頃から両親は休みの度に姉と私を熊本へ連れてきた。思い出はむしろ、その頃のことの方が多い。祖父母の住む場所としての熊本。
カブトムシや蝉を採って遊ぶ夏。親戚が集まって会食をする正月。それが何度も何度も繰り返された。
父は会社勤めの後半になって熊本勤務になり、その後、県外への転勤はなくなった。祖父母は他界し、両親の住む場所としての熊本に変わった。
今回帰ってきたのは父の墓が立ったからだ。私にとっての熊本は、時間とともに変遷していく。