gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

父が逝く 7

30年前に祖父が逝ったとき、私が怖れた唯一のことは、いつか祖父の声を忘れてしまうのではないか、ということだった。

30年過ぎても、私は頭の中で祖父のハスキーな声を明確に再現できる。音はなくとも、亡き人の声は聞くことができるのである。それも、私が生きている限りは永遠に。だから、私は父の声を失うことを怖れることはない。

昨夜、父が逝ってから初めて父の夢を見た。私は名もない外国の町から故郷の両親のもとへ戻った。いつもと変わらない2人で、父は当然のように座布団に座っている。母は立って、片づけものをしている。母がひとこと、外国で自由に過ごす自分のことを褒めた。父が、うなずきながら、「そぎゃんたい」

父は今後も熊本弁で私に語りかけるだろう。私が生きている限り永遠に。