家へ歩いて帰る途中、必ず青山墓地の中を通る。
最初、深夜ひとりで帰るときには薄気味悪い感じがして早足で通り過ぎていたが、数か月が過ぎて、逆に今は人間を感じるようになり、ゆっくりと通るようになった。守られている感じすらある。
1年前に父が逝ったことも影響しているだろう。
直立した墓石は、死者を呼ぶアンテナである。生者が願えば、死者の霊魂はそこへ帰ってくる。石を用いるのは、永遠を願うからだ。
墓を持たない文化もあるが、聖なる河へ死体を流すのも、死体を鳥に食べてもらうのも、永遠を願う気持ちに変わりはないだろう。
生が有限であるがゆえに、人は無限を願う。墓地とはそのような場所だ。