gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

カリオストロ

ベンヤミン 子供のための文化史」の中の一節で、18世紀の大詐欺師カリオストロについて書かれている。

「かれのもった圧倒的な力は、どこから由来するのだろうか。(中略)多くのひとが信ずるところによると、それはかれの視線のせいである。かれの目に凝視されたひとは誰ひとり、その呪縛から遁れられなかった、といわれている。」

では、その強い視線は、何に由来するのか。

「じっさい、カリオストロの異常なまでの強さは、じぶんを信ずるところから、自分の説得力と構想力、そして人心を操る能力を信ずるところから、発していた。こうして、かれにあっては自信が、高まり高まって、いわばひそかな宗教に転化していたのである。」

世紀の大詐欺師とまではいかないが、時折、仕事の中でカリオストロのような人間に出くわすことがある。異様なほど、自信に満ちあふれているがゆえに、一時期だけ周りに錯覚を起こす。そして、ほどなく没落する。

自信が揺るぎないものであるほど、周囲の錯覚は長続きするだろう。カリオストロも、ヒトラーも、自信が揺るぎないがゆえに、長期に亘って人に影響を与え続けることができたのだろう。

カリオストロになりたい人間は、おそらく後を絶たない。そして、そのような人間を世の中も心待ちにしているような感じがして、どうも気持ちが悪い。