死とはなにものでもなくなることではなく、すくなくともなんぴとかにとって、現実としてあったものが、実現と呼ばれるところのものになることだ、とあの人は言っていた。(「意味の変容」p.102)
今日、現実として起こった出来事のひとつひとつが、遠い未来に想い出に変わり、つなぎ合わせられるとき、一点一点に過ぎなかったものは、一つのかたちに結晶する。それを実現と呼ぶのだろう。
しかし、実現は死である。結晶したかたちは死である。到達した意味は死である。そして、死が、人を、さらに次元を高めた新たな現実へと立ち向かわせる。死が人を生かす。
そのような生と死の反復の中で生きることについて、「意味の変容」という本は語っている。
意味を取り去ることによって構造し、構造することによって意味を見い出す。
意味を取り去ることを恐れてはならない、と。