私は知らない間に誰かを殺してきただろう。あるいは、知らない間に誰かを生かしてきたこともあるかもしれない。
ある人の時間をつぶすことによって、その人がその時間を使えば救われたかもしれないどこにあるかもわからない生命を死に追いやってしまったこともあるだろう。ただ、それが当の私には見えないところで起こるから、罰せられないだけ。日々は淡々と過ぎていく。けれど、罪は生きるほどに積み重なっていく。
道を歩けば、蟻を踏んづけてしまったかもしれない。もっと、目に見えないたくさんの生き物を私は知らない間に殺してきただろう。
そして、それと同じように、私はたくさんの他人の時間を殺してきただろう。
蟻を殺すことはこのように簡単だが、私に蟻を生かすことができるだろうか。
私に、他人の時間を生かすことはできるだろうか。できていないかもしれないが、あるいは、知らない間に誰かの時間を生かしてきたこともあるかもしれない。
せめてそう祈ることによって、自分の生を肯定したい。