人間は他人の役に立つために生まれてきたんだ、と教える教育がよいかどうかはわからない。
けれど、ぼくは陽向にそう教えてきた。
自分の興味をどんどん追求していくために生まれてきた、という方が正しいだろう。
その結果として、自分のしてきたことが他人のためになっている、というのが理想かもしれない。
だが、自分の興味があることをまだ見つけられていない人がそれを見つけるためには、どうすればいいのだろう?
いろんなことにトライするといい、と言っても、トライできない性格の子もいる。
どうせ自分は何もできない、と思い込んでいるのだ。
もしくは、どうせ何をやってもおもしろくない、と思い込んでいるのだ。
そんな子は、自分が人の役に立てる人間だ、ということを知らないのかもしれない。
陽向は、能登で壊れた家を自分の目で見て、困っている人たちの役に立つべく片付けを手伝った。
それを経験することができて、陽向は変わった。
簡単に言えば、自信を取り戻した。自分という存在に、明確な意味を見出した。
あれから、彼の目が生気を帯びている。
すべて解体してしまって、これから新たな構築を始める。
今度は、基礎がしっかりしている。大丈夫だ。