gridframe001の日記

とりかえのきかない世界を生きるために

店舗という歴史をつくる 1

ぼくは、ひとり旅が好きで、20代の半分は海外で過ごしていました。アフリカでも、ヨーロッパでも、南米でも、アジアでも、店舗はその国の文化を最もよく表す場でした。商品、サービス、スタッフ、カスタマー、空間のどれをとっても発見に満ちていて、生命のエネルギーを感じ取ることができたのです。

その国の文化を美術館や博物館で知ろうとする人はたくさんいます。

しかし、例えば、アーティストが作品を展示する目的が、見る人々に「気づき」を与えることだとすれば、美術館で「これを見てください」と示された作品によって、その本質を汲み取ることはむしろ難しいのではないでしょうか。

なぜなら、「気づき」とは、発見されるものであるからです。

それは、隠れたところに置かれるべきもので、まずは違和感として受け止められ、いつの間にか凝視しているような場所で初めて成立する一対一の関係の中に見出されます。

店舗は、「ビジネスの箱」を第一義とする場所だからこそ、その国の文化の本質にベールをかけてくれて、だからこそ逆に、そこに見え隠れしている「なま」の文化に触れることができるのだと思います。

そんな海外のお店から多様な価値を吸収する旅から、日本に戻ってくると、やはり入り浸っているお店があって、そこで様々な方々と触れ合う中で自分の人格の大事な部分が形成されていった、と感じています。


このような経験から、店舗は文化を生み出したり、継承したりする場として最も重要な場ではないか、と考えています。ビジネスの箱であると同時に、大きな社会的役割を担っているのだと。

店舗を文化の発信基地と位置付ける試みは今も数多くありますが、ことさら何かを見せるために用意することが重要なのではなく、元々すべての店舗は文化の発信基地としての役割を持っているのだ、と捉えることが重要だと思います。


これからお店をつくりたい、とお考えになるときに、このような視点を明確に持ち、「歴史をつくる」という自覚を持てるかどうかが、長く愛されるお店になるかどうかの分岐点になるのではないかと思います。


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