ぼくらは、全く反対の性質を持つこれら2つの世界を同時に生きていて、それらを行ったり来たりしている。だから、ぼくらは、だれもがある程度二重人格的だ。そして、2つの世界は、互いに論理的に閉じているため、どちらか一つの世界に偏った人同士では、お互いを理解し合うことが難しいこともあり、そこから数々の問題が発生している。
多くの人が、2つの世界を自由に行き来できる装置を必要としている。
ぼくたちグリッドフレームは、空間のつくり方によって、これら2つの世界を行ったり来たりする装置をつくれると考えており、これまでにも、それを根源的なテーマとして様々な空間をつくってきた。
例えば、カフェには心休まる環境が必要だ。ぼくらは、何も考えたくないときには、とりかえのきく世界の、たくさんの人間の中に紛れるような環境に身を置きたいと思う。その方が心が休まるからだ。そのような空間は、どこにでもあるような内装でかまわないだろう。
けれども、その空間のディテールには何か見慣れない、不思議で複雑な質感があるとする。それは、ぼーっと眺めれば、意識の中に入ってくることもないけれど、焦点を合わせれば、思わず引き込まれて見入ってしまうようなものだ。カスタマーは、ぼーっと眺めれば、風景として見えてくるため、とりかえのきく世界に留まることができ、焦点を合わせれば、そこに一対一の関係が成立し、とりかえのきかない世界が開示される。カスタマーは、選択的にどちらかの世界に属することができるのだ。
今後も、ぼくらがめざすのは、このような空間だ。