ぼくは、グリッドフレームを立ち上げる前に、ある大企業に属していた。
グリッドフレームの原案をアメリカの大学から持ち帰った私は、企業内で研究の成果を活かそうと、たくさんの会社の先輩たちにプレゼンした。
それぞれによく耳を傾けてくださったことに感謝している。
だが、結果としての反応は、概ね否定的だったといっていい。
今思えば、当然である。
それに、今のぼくから見たら、そのプレゼンは十分なものではなかった。
けれど、今、自信を持って、そのときぼくがプレゼンした内容は、大企業にとって必要なものを示していた、と言える。
ぼくは時代を理解していなかったことを、今になって明確に理解するのだけれど、とはいえ、他の道はなかった。
選択肢など、あるように見えるだけで、いつも道は一つだ。
だから、どのようなことも後悔はしない。